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七草粥の由来と正しい作り方、ご存知ですか?一年の無病息災を願う、日本の美しい伝統

1月7日、お正月の締めくくりにいただく七草粥。ご馳走で疲れた胃を休めるだけじゃない、その深い意味と歴史、そして誰でも美味しく作れるレシピをご紹介します。

食卓に置かれた温かい七草粥
新年の始まりに、心と体を優しくいたわる一杯。Source: Markus Winkler on Unsplash

新年が明けて数日が経ち、華やかだったお正月の雰囲気も少しずつ日常へと戻っていく。そんな1月7日、皆さんは何を食べますか?そう、多くの家庭で「七草粥」をいただくのではないでしょうか。おせち料理やお雑煮、親戚との集まりでのご馳走続きで、正直ちょっと疲れたな…と感じる胃腸に、この素朴で優しいお粥がじんわりと染み渡る瞬間は、なんとも言えない安らぎをくれますよね。

「お正月に食べ過ぎたから、七草粥でリセットする日」くらいの感覚で捉えている方も、もしかしたら多いかもしれません。もちろん、それも大切な役割の一つ。でも、この一杯のお粥には、私たちが思う以上に、遥か昔から受け継がれてきた人々の深い願いや、自然と共に生きてきた知恵がぎゅっと詰まっているんです。

今日は、そんな七草粥の背景にある物語を少し紐解きながら、その正しい作り方、そして現代の私たちなりの楽しみ方まで、じっくりとご紹介したいと思います。この記事を読み終える頃には、きっとあなたも誰かに話したくなるはずです。

七草粥とは?その由来と歴史

七草粥の習慣は、一体いつから始まったのでしょうか。そのルーツは、驚くことに古代中国にまで遡ります。唐の時代、1月7日を「人日(じんじつ)の節句」とし、7種類の若菜を入れた温かい吸い物「七種菜羹(しちしゅさいこう)」を食べて、一年の無病息災を祈る風習があったそうです。これが奈良時代に日本へ伝わりました。

そして、日本古来の風習と見事に融合します。それが、年の初めに雪の中から芽吹いた若菜を摘み、その生命力をいただくことで健康を願う「若菜摘み」という文化です。中国から伝わった風習と、日本の伝統的な自然観が結びつき、平安時代には宮中行事として「七草粥」が食べられるようになりました。そして、江戸時代になると幕府がこの日を公式な祝日としたことで、庶民の間にも広く定着していったのです。

つまり、単なる「胃休め」という現代的な解釈だけでなく、「新しい年の邪気を払い、家族みんなが一年間、病気をせず元気に過ごせますように」という、切実で温かい祈りが込められた、大切な行事食だったのですね。自然の生命力をいただくことで、心身を清め、新たな年をスタートさせる。そう思うと、いつものお粥が少し特別なものに見えてきませんか?

春の七草、それぞれの意味と効能

七草粥の主役である「春の七草」。皆さんは、7つすべて言えますか?「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ」。これらが春の七草です。それぞれに縁起の良い意味が込められており、また、冬の時期に不足しがちな栄養を補う素晴らしい効能を持っています。

  • セリ(芹):「競り勝つ」に通じる縁起物。独特の香りが食欲を増進させ、鉄分も豊富で体を温める効果があると言われています。
  • ナズナ(薺):「撫でて汚れを除く」という意味が。ぺんぺん草の名で親しまれ、解熱や利尿作用があるとされています。
  • ゴギョウ(御形):「仏体」を意味する縁起の良い名前。古くから咳や喉の痛みを和らげる薬草として知られていました。
  • ハコベラ(繁縷):「繁栄がはびこる」として子孫繁栄を願う草。タンパク質やミネラルが豊富で、胃の働きを助けます。
  • ホトケノザ(仏の座):葉の形が仏様の座る台座に似ていることから。胃腸の調子を整えると言われています。(※一般的に知られるシソ科のホトケノザとは別種です)
  • スズナ(菘):これは「カブ」のこと。「神を呼ぶ鈴」に見立てられ、消化を助ける酵素が豊富です。
  • スズシロ(蘿蔔):こちらは「大根」のこと。「汚れのない清白」を意味し、同じく消化を助け、風邪の予防にも良いとされています。

こうして見ると、昔の人々が、厳しい冬を乗り越えるために、身近な野草から栄養を摂り、体の調子を整えていた生活の知恵に、ただただ感心させられます。

誰でも簡単!美味しい七草粥の作り方

さて、七草粥の素敵な背景を知ったところで、実際に作ってみましょう。「なんだか難しそう…」と感じるかもしれませんが、心配は無用です。最近ではスーパーで下処理済みの「七草セット」が手軽に購入できますし、炊いたご飯から作れば、あっという間に完成します。

今回は、一番手軽な「炊いたご飯」を使ったレシピをご紹介します。

【材料(2人分)】

  • 炊いたご飯:お茶碗に軽く2杯分(約300g)
  • 七草セット:1パック
  • 水:400〜500ml
  • 塩:少々
  • (お好みで)出汁パックや昆布:1つ

【作り方】

  1. 七草の下準備をする。 スズナ(カブ)とスズシロ(大根)は皮をむき、薄いいちょう切りにします。葉の部分と他の七草は、よく洗い、塩(分量外)を加えた熱湯でさっと15秒ほど茹でます。こうすることで、アクが抜け、色鮮やかに仕上がります。茹で上がったら冷水に取り、水気をしっかり絞ってから細かく刻んでおきましょう。

  2. お粥を煮る。 鍋にご飯、水、そしてスズナとスズシロの根の部分を入れ、中火にかけます。(出汁を使う場合はここで入れます)。沸騰したら弱火にし、ご飯をほぐすように混ぜながら、10〜15分ほど、お好みの柔らかさになるまで煮込みます。

  3. 七草を加えて仕上げる。 お粥が炊き上がったら、刻んでおいた七草の葉を加え、さっと混ぜ合わせます。火を止めて、塩で優しく味を調えたら完成です。七草の香りや食感を活かすため、加えた後はあまり煮込まないのがポイントです。

たったこれだけ。本当に簡単ですよね。お米からじっくり炊くのももちろん美味しいですが、忙しい日常の中では、この手軽さが伝統を続けるコツかもしれません。

もっと楽しむための、ちょっとした工夫

基本の作り方をマスターしたら、少しだけアレンジを加えてみるのも楽しいものです。例えば、お粥を炊くときに鶏がらスープの素を少し加えれば、中華風の味わいになりますし、仕上げに溶き卵を回し入れても、また違った美味しさがあります。

トッピングで遊ぶのもおすすめです。定番の塩昆布や梅干しはもちろん、カリカリに焼いたお餅を乗せたり、香ばしいゴマ油を数滴たらしたり。七草が手に入らない場合は、カブの葉や大根の葉、ほうれん草、三つ葉など、家にある青菜で代用したって良いのです。一番大切なのは、家族の健康を願う気持ちですから。

年の初めに、こうして少しだけ手間をかけて、季節のものをいただく。その行為そのものが、私たちの暮らしを豊かにし、心を整えてくれるような気がします。今年の1月7日は、ぜひご自身で七草粥を炊いて、その優しい味わいと共に、健やかな一年の始まりを感じてみてはいかがでしょうか。

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