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馬のブラッシングは健康診断!見逃しがちな5つのチェックポイント

愛馬との大切なコミュニケーションの時間、ブラッシング。実はこれ、最高の健康診断タイムでもあるんです。見逃しがちなポイントを抑えて、愛馬の健康を守りましょう。

厩舎で馬の体を優しくブラッシングする女性
ブラッシングの時間は、言葉を交わさずとも心を通わせる、かけがえのないひととき。Source: Barbara Olsen on Pexels

馬との暮らしの中で、私が特に大切にしている時間があります。それは、ブラッシングの時間。ただ体をきれいにするだけじゃなく、馬の温かい体に触れ、その日の調子を感じ取ることができる、かけがえのないコミュニケーションの時間だと思っています。

以前、乗馬クラブの先輩から「ブラッシングは最高の健康診断だよ」と教わったことがあります。最初はピンとこなかったのですが、毎日続けるうちにその意味がよくわかるようになりました。馬はとても我慢強い動物で、多少の不調は隠してしまうことが多いんです。だからこそ、私たちが日々の触れ合いの中で、小さな変化に気づいてあげることが何よりも重要なんですよね。

今日は、私がいつもブラッシングをしながら意識している「健康チェックのポイント」を5つ、ご紹介したいと思います。これを知っているだけで、愛馬への理解がぐっと深まるはずです。

なぜブラッシングが「健康診断」になるの?

そもそも、なぜブラッシングが馬の健康チェックに繋がるのでしょうか。それは、馬の全身をくまなく、そして直接触れることができる唯一の時間だからです。馬房の掃除をしているときや、馬装のときにも馬の様子は見ていますが、体全体をじっくりと観察し、手で触れて確認できるのは、やはりブラッシングの時間ならでは。

考えてみてください。私たちは、もし体に何か異変があれば「ここが痛い」とか「なんだか熱っぽい」と口に出して伝えられます。でも、馬はそれができません。だから、彼らが発する言葉にならないサインを、私たちが敏感に察知してあげる必要があるんです。

例えば、いつもは気持ちよさそうにしている場所をブラッシングしたときに、急に嫌がる素振りを見せたとします。それは「そこは触られると痛いよ」という彼らなりのメッセージかもしれません。また、ブラシをかける手を通して、普段はない熱感や腫れ、小さな傷に気づくこともできます。こうした日々の小さな発見が、病気の早期発見・早期治療に繋がり、愛馬の健康を守ることに直結するのです。

1. 全身の「熱感」と「腫れ」をチェック

まず、ブラッシングを始める前に、あるいはブラシをかけながら、手のひら全体を使って馬の全身を優しく撫でてみてください。特に注意したいのが、脚、背中、そしてお腹周りです。ここでチェックしたいのは、「いつもと違う熱」や「腫れ」がないかどうか。

馬は運動後、筋肉を使った部分が熱を持つことがありますが、それが翌日になっても引いていなかったり、特定の箇所だけが局所的に熱を持っていたりする場合は注意が必要です。何らかの炎症が起きているサインかもしれません。私も、愛馬の脚に普段はない熱っぽさを感じて、すぐに獣医さんに診てもらった経験があります。幸い大事には至りませんでしたが、あの時気づかなければ…と思うと、今でも少しひやりとします。

また、腫れやしこりがないかも、手で触れることでよくわかります。特に、鞍を置く背中の部分や、腹帯が当たるお腹周りは、馬具による圧迫で皮膚トラブルが起きやすい場所。指で軽く押してみて、馬が痛がる様子はないか、硬くなっている部分はないか、じっくりと確認してあげましょう。

2. 被毛のツヤと皮膚の状態

馬の健康状態は、被毛に正直に現れます。健康な馬の毛は、まるでベルベットのような光沢があり、手触りも滑らかです。ブラッシングをしながら、毛ヅヤはどうか、パサついていないかを見てあげてください。もし、急に毛ヅヤが悪くなったと感じたら、栄養状態の乱れや、内臓系の不調が隠れている可能性も考えられます。

次に、ブラシで毛をかき分け、皮膚そのものの状態をチェックします。フケが多く出ていないか、乾燥していないか、あるいは逆にベタついていないか。特に、汗をかきやすい場所や、汚れが溜まりやすい場所は、皮膚炎のリスクが高い部分です。

私も、愛馬のたてがみの付け根あたりに、小さな湿疹を見つけたことがあります。ゴムブラシで優しくマッサージするようにブラッシングしていた時に、指先にポツっとした感触があったんです。これも、毎日触れているからこそ気づけた小さなサイン。早期に薬を塗ってあげたことで、悪化せずに済みました。小さな傷や虫刺されなども、ブラッシングの時間なら見つけやすいはずです。

カウボーイハットをかぶった人が馬の蹄を手入れしている様子
「第二の心臓」とも呼ばれる蹄。毎日きれいに裏掘りをして、異常がないかチェックする習慣を。Source: RDNE Stock project on Pexels

3. 「第二の心臓」蹄(ひづめ)の裏側

蹄のケアは、馬の健康管理の基本中の基本。ブラッシングの最後には、必ず鉄爪(てっぴ)を使って蹄の裏をきれいに(裏掘り)してあげましょう。この時、ただ土や石を取り除くだけでなく、蹄の状態をしっかり観察することが重要です。

まずチェックしたいのは、異物が刺さっていないか。小石や釘などが刺さったまま放置すると、そこから細菌が入って重大な感染症を引き起こすこともあります。次に、蹄叉(ていさ)と呼ばれるV字型の部分。ここは湿気が溜まりやすく、「蹄叉腐爛(ていさふらん)」という病気になりやすい場所です。黒くてドロっとした、独特の臭いがする分泌物が出ていないか、確認してください。

さらに、蹄全体にひび割れがないか、蹄鉄が緩んでいたり、釘が浮いたりしていないかも大切なチェックポイント。歩いているときにカポカポと音がする場合は、蹄鉄が緩んでいるサインかもしれません。蹄のトラブルは、馬にとって大きな苦痛を伴います。毎日の裏掘りで、小さな異常も見逃さないようにしましょう。

4. 目・鼻・口元の「いつもと違う」

顔周りのブラッシングは、馬との信頼関係が試される繊細な作業。でも、ここも重要な健康チェックポイントが満載です。

まずは「目」。健康な馬の目は、輝きがあって生き生きとしています。目やにが多くないか、涙やけしていないか、白目の部分が充血していないかを見てあげてください。まぶたが腫れぼったい時も、何らかの不調のサインです。

次に「鼻」。少量の透明な鼻水は問題ありませんが、黄色や緑色の鼻水が出ていたり、量が多かったりする場合は、呼吸器系の疾患が疑われます。最後に「口元」。唇の周りに傷がないか、口角が切れていないかを確認します。ハミが合っていなかったり、騎乗者の拳が強すぎたりすると、口元に傷ができてしまうことがあります。ブラッシングのついでに、そっと唇をめくって歯茎の色を見てみるのも良いでしょう。健康な歯茎はきれいなピンク色をしています。

5. 表情や仕草から「心の健康」を読む

最後は、馬の表情や仕草から「心の健康」を読み取ること。これは、ある意味で最も重要かもしれません。ブラッシング中、馬はどんな表情をしていますか?気持ちよさそうに目を細めたり、唇をゆるませたりしていますか?それとも、耳を伏せ(耳を絞る、と言います)、体をこわばらせて、どこか緊張しているように見えますか?

いつもはおとなしいのに、今日はなんだかソワソワしている。いつもは触らせてくれるお腹を、今日は嫌がる。こうした行動の変化は、体調不良だけでなく、精神的なストレスの表れである可能性もあります。何か嫌なことがあったのか、あるいはどこかに痛みを感じているのか。

その子の「いつもの状態」を知っているからこそ、「いつもと違う」に気づくことができます。ブラッシングは、そんな馬の心の声に耳を傾ける絶好の機会。体をきれいにしながら、心もマッサージしてあげるような気持ちで、優しく触れ合ってみてください。

馬との時間は、私たちに多くのことを教えてくれます。言葉を交わさなくても、触れ合うことで深く理解し合える。ブラッシングは、まさにその象徴のような時間です。ぜひ、明日からのブラッシングタイムを、愛馬のための「健康診断」の時間としても、大切にしてみてくださいね。

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